電子署名法と認定認証業務

電子署名法と認定認証業務について

従来からビジネスの場では、紙に記載された文書等は内容の改ざんが容易に確認できることや、商習慣等により押印を確認できれば、本人が作成したものと推定することができるため、契約書等、多くの文書において記名・押印した文書を取り交わしたり、保存する運用が広く行われてきました。このことは、民事訴訟法(民訴法)第228条4項において、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定され、法的に裏付けられています。
一方、電子メール、送付された文書作成ソフトで作成された契約書等の文書、表計算ソフトで作成された各種の電子的な情報は、内容の変更が容易で、改ざんや差し替え等を検知することができず、法的な整備もされていませんでした。しかしながら、こうした電子情報は、近年、社会・経済活動において不可欠のものとなっているばかりか、電子情報の流通は、社会・経済活動の効率化、迅速化等のために急速に増大していきました。

もし、こうした電子情報に対して、記名・押印した文書と同等の効力があればどうでしょう?ビジネスのスピードは飛躍的にアップし、紙を扱う手間から開放されコストも削減できます。そのためには、電子情報に記名・押印に相当するものを電子的に付与し、記名・押印した文書と同等の法的効力を与えることが必要になります。

電子署名法

このような背景の基に、「電子署名法」(電子署名及び認証業務に関する法律:法律第百二号)が平成12年5月31日に制定され、電子署名が定義され、法的な有効性を与えました。

電子署名法は、大きく

  • 電磁的記録の真正な成立の推定(第3条)
  • 特定認証業務に関する認定制度

の2本柱からなっており、情報の電磁的方式による流通及び情報処理の促進を図ることを目的としています。

電子署名

この法律で「電子署名」は、電磁的記録(当該情報)に対して以下の要件を満たして行われる"措置"と定義されています。(第2条1項)

(I)当該情報が、当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること、(本人性)
(II)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること、(非改ざん性)

とされています。

また、電磁的記録について、本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定するとしています。(第3条)
これは民訴法第228条4項に対応する内容となっており、電子文書に本人の電子署名があれば、記名・押印した文書と同等の法的証拠性が与えられることになりました。
なお、電子署名を行うソフトウェアには電子署名が本物であることを確認する署名検証機能が用意されているのが通例です。

特定認証業務

では、本人による電子署名が行われている事をどのように証明すればよいのでしょうか?

電子署名法では電子署名が本人のものかどうかを証明する業務を「認証業務」としており、電子署名のうち、本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務を「特定認証業務」と定義しています。(第2条3項)なお、現在、「特定認証業務」の基準に採用されている認証技術は公開鍵暗号を用いた技術となっています。(電子署名法施行規則 第2条)

すなわち、電子署名が本人のものかどうかを証明するための電子証明書(公開鍵証明書)を発行する業務が「特定認証業務」であり、その業務を行う第三者機関は「電子認証局」と呼ばれています。

認定認証業務

また、電子署名法では特定認証業務の中でもさらに厳格な基準をクリアした場合に与えられる認定制度が定められています。

(I)認証業務に使用する設備が主務省令で定める基準に適合するもの (II)認証業務における利用者の真偽の確認が主務省令で定める方法によって行われるもの (Ⅲ)認証業務が主務省令で定める基準に適合する方法によって行われるもの

であることが認められる認証業務については、主務大臣(内閣総理大臣・法務大臣)による特定認証業務の認定を受けることができます。通常、認定を受けた特定認証業務を「認定認証業務」と呼びます。

電子署名法の認証業務
電子署名法の認証業務

特定認証業務の認定を受けるためには、前記の要件を満たしているかについて、国および国が指定した調査機関の実地調査を受ける必要があります。認定の有効期間は政令で定められており、認定を継続して受けるためには有効期間が終わるまでに、国および指定調査機関による実地調査を受ける必要があります。

電子署名法では認定認証業務を行う事業者を「認定認証事業者」といい、一般的には「認定認証局」と呼称しています。認定を受けることにより認定認証局は、厳格な基準を満たして運用していることが国によって確認されていると言えます。

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